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2つの名を持つ医療用医薬品
いま話題の医薬品、「アビガン」ですが、実はこの薬には「ファビピラビル」という、もう1つの名があることをご存知でしょうか。
基本的に医療用医薬品の名称は2つ存在します。
■ 1つ目は「一般名」です。
これは「成分名」と言い換えても差し支えないでしょう。命名は世界保健機関(WHO)が行います。医療現場での混乱を防ぐために、国際的に統一された名称であり、開発した企業であっても商標登録することは出来ません。
■2つ目は「販売名」です。
これは、企業が独自につける名称で、取り違えを招く表現でなければ比較的自由に設定することができます。商標登録も可能です。
例えば、田辺三菱製薬が開発したアレルギー性疾患治療剤の「タリオン」(一般名:ベポタスチンベシル酸塩)は、『ギリシア神話の美の三女神の一人Thalia〔花(=鼻)の盛り〕に由来』とされています。つまりダジャレです。
「アビガン」は富士フイルム富山化学の販売名で、一般名は「ファビピラビル」です。一方、話題となっているもう1つの医薬品、「レムデシビル」は一般名で、開発したギリアド・サイエンシズの販売名は「ベクルリー」です。
理由は定かではありませんが、メディアの報道は、片や販売名、片や一般名というねじれが生じています。
医薬品の特許権存続期間は原則20年、最大25年です。特許が切れると、開発企業以外でも製造が可能となります。これがいわゆる「ジェネリック医薬品」です。
そのため、権利化の観点では商標登録できる「販売名」が重要になってくるのです。商標権は10年ごとの更新をすれば実質永久的に存続させることができます。
呼びやすく、覚えやすい販売名を設定し、特許権が消滅するまでの間に、ブランド価値を高めていくことが、医療用医薬品における販売戦略の重要なポイントです。
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