■幕末の志士を独り占め?
東京の企業が「吉田松陰」「高杉晋作」「桂小五郎」という幕末の志士や指導者たちの名を商標登録していたことがわかり、3人の出身地である山口県萩市は2008年2月、特許庁に登録取り消しを求める異議申し立てをしました。
■地元の著名人には敏感
萩市は「遺族や3人を敬愛する郷土の人たち、国民の社会的感情を著しく損ね、公序良俗を害する」とし、「人物の名声に便乗した利益取得が目的といわざるを得ない。同社(東京の企業)が商標登録した商品の流通は確認していないが、歴史上の著名な人物名に関して独占排他的に権利を主張すること自体認められるべきではない」として、商標登録制度の改正も求めていくという。
■出願と名義変更の流れ
2005年6月 | 宮城の食品会社が「吉田松陰」「桂小五郎」(29類/食用油脂など)、 「高杉晋作」(33類/酒類など)の3件を出願 |
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2007年10月 | 東京の企業へ商標権が名義変更される |
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2007年11月 | 商標登録完了 |
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2008年2月 | 山口県萩市が異議申し立て |
■人名商標の事例
歴史上の人物名の商標登録を巡っては、「坂本龍馬」「織田信長」「武田信玄」「石川啄木」(全て33類/酒類)、「徳川家康」(28類/玩具)などでの登録例があります。また「吉田松陰」についても、広島県の酒造会社が酒類の分野で出願し63年2月に商標登録されており、血縁関係がなくても商標登録が認められているものもあるのが現状です。
今後も上記のような独占を反対する主張が増えた場合、特許庁が制度を改正することも考えられます。
(※現存の著名な芸名等については4条1項8号が登録要件となっています。)
※第4条(商標登録を受けることができない商標)
1項(柱書:省略)→ 不登録事由(商標登録を受けることができない商標)
8号.他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは
筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)