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NL170 一般名称でも商標登録できる?

お客様からよくいただくご質問に「一般的な単語でも商標登録できるんですか?」というものがあります。この質問が難しいのは「一般的な単語」という言葉の解釈が個人によって幅があり、そもそも一般的な単語とは何か?という定義があいまいなためと考えられます。今回はこの問題について商標登録のポイントをまとめてご紹介させていただきます。

●その分野で一般的に使われているか否か

商標は登録することで他社に同じ名称を使うことを禁止できます。このため一般的に使われている言葉を商標登録してしまうと取引上不都合が生じるため登録できないようになっています。

ただこれにも例外があり、ここで言う「一般的に使われている言葉」とはあくまでその分野においての話であり分野を変えれば「一般的でない」可能性もあります。

事例①APPLE/アップル(アップル インコーポレイテッド)

たとえばAPPLE(アップル)という単語を商標登録する場合、登録の分類が食品や飲料の場合、「原料を表示しているに過ぎない」と判断され登録できません。一方PCなどの分類での登録の場合はAPPLEとの関連性が薄く、商取引に関して不都合も特に生じないため登録が認められています。
※登録事例 APPLE 9類 11C01 11C02(電子計算機,その他の電子応用機械器具及びその部品) アップル インコーポレーテッド

事例②JUICE/ジュース(パイロットコーポレーション)

こちらも同様に、飲料や食品の分類では、単なる商品のカテゴリー名に過ぎないので登録ができませんが、ジャンルを文具にすると文具との関連が薄く、表現として理解されるので登録が認められています。JUICEは全42色が揃う顔料ゲルインキボールペンのネーミングで、同社では派生商品としてジュースペイント(水性顔料マーカー)やジュースアップ(激細多色ボールペン)などがあります。
※登録事例 Juice 16類 01A02 25A01 25B01(紙類,文房具類,事務用又は家庭用ののり及び接着剤) (株)パイロットコーポレーション

●その商品名から企業を特定できるか

一般名称的な表現であっても、その名称を見れば特定の企業をイメージされる場合は、商標登録が認められるケースもあります。ただ出願の段階では特許庁から拒絶査定を受けることも多く、登録に至るためには「インターネットの検索でも企業が特定できる」や「名称から一般的にその企業をイメージする」などの証拠を集めてアピールすることなどが必要となりますが、どの程度の認知が必要か、どのようなデータかが必要かについては明確な基準がないため都度の対応が求められます。

事例③あずきバー(井村屋)

井村屋の「あずきバー」と言うと1973年発売で今年50周年を迎えるロングセラー商品として親しまれています。通常であれば、この名称は「あずき」→原材料、「バー」→形状、の一般的な表現ということで登録が難しい例と考えられます。このような名称であっても「あずきバー」と言えば「井村屋」という唯一無二の特定性が認められれば商標登録されることがあります。
※登録事例 あずきバー 30類 30A01(あずきを加味してなる菓子) 井村屋グループ(株)

事例④糸ようじ(小林製薬)

小林製薬と言うとアイディアにあふれた商品の数々とユニークなネーミングで親しまれている会社ですが、この「糸ようじ」は一見すると普通なネーミングに見えます。しかしこの名称が普通でないところは普通名称的に見えるにもかかわらず商標登録されているところです。

「糸ようじ」の商標登録は実は商標出願から8年間を要しています。最初の審査では普通名称であると判断され拒絶査定となり、その後拒絶査定不服審判を経て商標登録が認められています。
※登録事例 糸ようじ 21類 01C01 21F01(歯間清掃デンタルピック,デンタルフロス,その他の歯間清掃具(但し,「つまようじ」及び「化粧用具」に属するものを除く。) 小林製薬(株)

●その他、一般名称的な表現で商標登録されている事例

・KATANA(SUZUKI) バイク
・NOTE(日産自動車) 自動車
・PEN(OMデジタルソリューションズ) カメラ
・COCOA(三菱電機/厚生労働者) 放射線治療情報ソリューション/新型コロナウイルス接触確認アプリ
・カクテル(大建工業) 建材
・SPOON(セイコー) 時計 
・Pepper(ソフトバンク) ロボット
・カフェラッテ(森永乳業) 乳飲料
・神戸コロッケ(ロックフィールド) 食品
・夕張メロン(夕張市農業協同組合) 食品