News Letter

VOL.113 各国で違う商標制度

■海外の商標制度
企業のグローバル化やインターネットなどの普及などによって、海外との距離が近くなった現在、ネーミングは国内だけでなく海外まで見越したものが必要となっています。もちろん海外で使用するネーミングは、それを展開する国での商標権取得がそれぞれ必要になります。しかし、商標制度は各国で定められており、世界共通ではありません。下記は一部ですが、日本と海外の商標制度の違いをご紹介します。

■1/登録主義と使用主義
日本は“登録主義”ですが、アメリカ・カナダ等は“使用主義”を採用しています。これは登録によって商標権が発生するのではなく、商標登録がされたとしても、実際に商品への使用がされていないと、商標権の効力が認められないというものです。日本では登録時に使用証明が求められておらず、商標を使用していなくても、登録によって権利を取得する事が可能です。
→ 日本企業がアメリカで商標権を取得する場合は?
・将来的に使用する意志があれば出願はできますが、原則として実際に使用を開始しなければ登録を受けることができません(マドプロ等による例外あり)。

■2/審査主義と無審査主義
日本や中国、アメリカなどは出願後に識別性や先行商標との類似などの審査が行われる“審査主義”です。他方、フランスやイタリアなどのヨーロッパ諸国は、識別性などの絶対的登録要件については審査が行われますが、先行商標との関係については、権利者からの異議申立てによって処理されます。
→無審査主義国で商標権を取得するには?
例えば、イタリアで類似商標がある場合であっても、公告後、先願商標の権利者による異議申し立てがない場合は、登録商標として認められます。

※まったく審査をしない完全な「無審査主義」はあまり多くありません(少なくとも、多くの日本企業が関心を持つ国については存在しないと思われます)。以前は、ヨーロッパ諸国について「無審査主義」と言うこともありましたが、最近はあまり用いられなくなったようです。

■3/識別性の判断
登録可能な識別性の判断も各国によって異なります。例えば日本国内で登録可能なネーミングであっても海外では識別性がない、として登録できない(使用は可)場合もあります。

■4/その他の違い
日本では商標区分、さらに類似群コードといった形で商品・役務を指定し、商標登録を行いますが、日本でいうところの「類似群コード」は各国様々に定められています。また、カナダでは区分の概念そのものがないそうです。また、登録までの期間も国によって大きく違い、非常に長くかかる国も多く、グローバル展開ブランドには早めの商標対策が必要になります。