弊社のニューズレターで幾度かにわたり、ご紹介してきました「地域団体商標登録制度」(地域ブランド)ですが、各地でトラブルが発生しているようです。 2006年4月の商標法改正に伴い、日本各地で地域ブランドの商標出願がおこなわれ、すでに300件を越える状況になっています。有名なところでは、「松阪牛」や「草加せんべい」、「さぬきうどん」など、誰もが知っている名産品が商標出願されました。
●事例(1)
愛知県では、「八丁味噌」の商標を2団体が奪い合っています(4月16日/朝日新聞)。 江戸時代から八丁味噌を造り続けている岡崎市の2社が設立した「八丁味噌協同組合」が、市外の業者が名称を使うのは『ただ乗りだ』と主張しています。また、県全域の業界団体「愛知県味噌溜醤油工業協同組合」は、「2社だけで独占使用するのはおかしい。県内の味噌業界は大打撃を受ける」と主張しました。結局、前者が「八丁味噌」で商標出願し、後者が「愛知八丁味噌」で商標出願しました。
●事例(2)
兵庫県では、「但馬牛(たじまうし)」と、「但馬牛(たじまぎゅう)」の二件が商標出願されました(4月20日/日経新聞)。畜産農家による「たじま農業協同組合」が、商標「但馬牛(たじまうし)」を出願し、「兵庫県食肉事業協同組合連合会」が、商標「但馬牛(たじまぎゅう)」を出願しました。 畜産業界では、生きた但馬牛を「たじまうし」、食肉処理された精肉を「たじまぎゅう」と呼ぶのが慣例とのことですが、表記はまったく同じなのですから、商標上は類似と判断され、混同を生じさせることが予測されます。
●事例(3)
駿河湾の名産「桜えび」も、名称の独占が問題になっています。蒲原、由比、大井川の加工業者は「駿河湾桜えび」で、由比町は「由比桜えび」で出願されました。
この地域団体商標制度は、名産品の競争力の強化や、地域経済の活性化を目標として始められました。商標権はその地域の製造組合や漁業組合、また農業組合などに対し与えられます。しかし商標権者となる、複数の製造組合などの調整に手間取るのではないかと危惧されていましたが、早くもその予測が的中したと言えるでしょう。 「地域名+商品名」から構成される地域ブランドは、今後も出願が増えると予測されていますが、事前のしっかりとした調整と準備が必要です。