ネーミングの基本として「言いやすい」「聞きやすい」「わかりやすい」「覚えやすい」「見やすい」などの要素を満たすものが良いと言われています。
その一方で、聞き慣れなかったり、違和感があったり、「意味は何だろう」と考えさせる表現は印象に残りやすく、記憶にひっかかるということで「フックになる」ことがあります。
今回はそんな「フック」の効いたネーミングをパターンに分けてご紹介します。
- 読みにくい、なんと読むのかわからない
例:Xi/クロッシィ(NTTドコモ)、DAZN/ダ・ゾーン(DAZNグループ)、NEWoMan/ニュウマン(ルミネ)など
いずれも英文字だけを見ても何と読むのかわからないネーミングです。
ただこの読みにくさがかえってインパクトや新規性を表現することにもつながっています。
Xiは(※1)「X」が「人、物、情報のつながり」と「無限の可能性」を意味し、「i」は「innovation:イノベーション(革新)」と「i(私)」を意味しています。
DAZNは(※2)スポーツなどで使われる「in the zone」を口語的に発音すると「ダゾーン」と聞こえることからこの名前になったということです。
またNEWoManは(※3)「あたらしい時代を生きる、すべてのあたらしい女性ために。あたらしい経験と出合う場所」というコンセプトに由来しているそうです。
このタイプのネーミングは初期の段階でマス広告などで何と読むのかの告知をすることが必須条件となります。
※1 NTTドコモニュースリリースより
※2 参考URL
※3 NEWoMan公式HPから抜粋
- そのカテゴリーでは珍しい表記を使う
例:い・ろ・は・す(日本コカ・コーラ)、カレーメシ(日清食品)、Ça va(サヴァ)缶(岩手県産)など
ミネラルウォーターの商品名では「evian」や「vittel」など欧米からの輸入品の英文字表現や、「南アルプスの天然水」や「六甲のおいしい水」などの日本の地名を使った表現が多く見られます。
「い・ろ・は・す」はあえて全てひらがなを使用し、イメージとしては和風だけれども意味はいろは+ロハス、など洋のイメージもあるというかなり個性的な表現となっています。
「カレーメシ」は従来日本語の表現が多くみられた(スープdeごはん、糖質想いの)カップご飯のジャンルであえて全てカタカナ表記にすることで存在感を強調しています。
また「Ça va(サヴァ)缶」は漢字やひらがな表記が大勢を占める缶詰商品の中であえてフランス語表
記にしているところが個性的でかつオシャレな表現となっています。
- ネガティブな言葉をあえて使う
例:悪魔のおにぎり(ローソン)、ざんねんないきもの事典(高橋書店)、注文を間違える料理店、など
ネーミングは通常ポジティブな表現や言葉が良いとされ、ネガティブな言葉が使われることはまれです。
しかしあえてネガティブな言葉を使うことで興味を引いたり、ギャップで結果的に良くみえたりということがあります。
「悪魔のおにぎり」※1は、もともとTVやSNSなどで話題になっていたレシピを参考にローソンが商品化したもので『おいしすぎてついつい食べ過ぎてしまう』ことから名付けられたそうです。
「ざんねんないきもの事典」※2の『「ざんねん」とは、生き物たちの“進化のあかし”。生き物は進化してきたからこそ、すごい部分もざんねんに思える部分も、あわせもっています』とのこと。
「ざんねん」という言葉で動物への親近感を深めて大ヒットした児童書です。
「注文を間違える料理店」は、2017年にスタートしたレストランプロジェクトです。
『「注文をまちがえるなんて、変なレストランだな」きっとあなたはそう思うでしょう。私たちのホールで働く従業員は、みんな認知症の方々です。ときどき注文をまちがえるかもしれないことを、どうかご承知ください。』とのこと。
「注文を間違える」という本来なら欠点として扱われる特徴を認知症とからめてユニークに表現しています。
※1 ローソン公式HPより
※2 高橋書店公式HPより
※3 注文を間違える料理店公式HPより
- ちょっと不思議な語感の外国語
例:シュクメルリ、バスク(チーズケーキ)、トゥンカロン、など
食の分野では安心感が求められることが多く、よく知られているメニューのほうが手に取りやすいように思われますが、時折「聞いたことがないメニュー」がヒット商品となることがあります。
シュクメルリはジョージア(国)発祥の料理で、鶏肉をガーリックソースで煮込んだもの。
牛丼チェーンの松屋が日本人に合うようにアレンジしてメニューに入れたことで話題を呼んだ料理です。
バスク(チーズケーキ)はスペイン発祥の、外側を黒く焦がした濃厚な風味のチーズケーキです。
こちらはローソンが「バスチー」の愛称で商品化して大ヒットし、のちに他のコンビニも追従するほどの人気となりました。
またトゥンカロンは韓国発祥の新しいタイプのマカロンで、一般的なマカロンよりサイズが大きく、間にたっぷりとクリームやガナッシュが挟まれています。
その華やかなビジュアルからSNS映えもすることで人気を広げているようです。