News Letter

VOL.121 中国市場での商標権問題が続く

■フランス・エルメス社 中国語社名の商標権訴訟で敗訴(2012年2月)
中国広東省のメーカーが1995年に「愛瑪仕」(エルメス)の商標を、衣服用に登録したとして、エルメス社はその取消を求めて中国の裁判所に訴訟を起こしていました。
エルメス社本来の中国語商標は「愛馬仕」ですが、これに酷似しているというのがその理由です。
エルメス社の「爱马仕(愛馬仕)」の中国での商標登録申請は記録上1996年となっています。エルメス社は「愛馬仕」が著名商標として認知されていると訴えていましたが、裁判所は、「愛馬仕」が中国本土で広く認知されていないとして、エルメス社の訴えを退けました。

■中国のIT企業が「iPAD」の商標権所有を主張
中国広東省のIT企業「唯冠科技有限公司」が、2000年にタッチパネル方式のPC「iPad」を発売し、台湾の同グループ会社が世界各地で商標を取得しました。
アップル社は「iPad」の商標をこの台湾のグループ企業から買い取りましたが、中国企業は中国本土の商標は、売却した中に含んでいないとして、双方の主張が食い違っていました。
米アップル社は中国の裁判所に「iPad」の中国商標を自社が有すると争いましたが、敗訴しました(2011年12月)。「唯冠科技」は中国税関に対し「iPad」の輸出入停止を申請し、中国の小売業や通信販売会社では、販売を見合わせるところも出ていました。

■米中間の商標問題の背景
この問題の背景には商標登録制度の違いがあると思われます。
世界の大勢は先願主義で、使用の有無を問わず、一日でも早い商標登録が有効とされています。しかし米国では先使用主義で、早い使用が証明されるほうが有利となっています。

■米アップル社が中国企業と48億円で和解
2012年7月、米アップル社は「iPad」の中国での商標権を主張する広東省の「唯冠科技有限公司」と48億円の和解金を支払ったと発表しました。商標権の取得を見誤った結果、多額の和解金の支出を余儀なくされ、新型商品の発売も4ヶ月以上遅れてしまいました。
中国での商品販売や輸出などを検討されている企業には、確実な商標登録をお勧めします。

■中国市場でも必ず商標登録を
中国に輸出するだけだから商標登録は必要ない、と考えていませんか?
上記の「iPAD」以外にも「aPad」から「zPad」まで、さまざまな権利者によって商標登録されています。
中国でも日本同様、3年間その商標を使用していないと不使用取消審判の対象となりますが、現実には取消の申請がない限り、そのままになっているのが実状です。
一度裁判になると消費者の信用を失うだけではなく、時間とコストの多大な損失になります。
また、その結果がうまくいかない事も少なくありません。販売や輸出の計画があるときは少しでも早い中国での商標出願をおすすめします。