近年、Z世代を中心に「性にとらわれず自分らしさを表現する」という思考が広がりを見せています。またSDGsの目標でも掲げられていることから「ジェンダーレス」「ジェンダーフリー」という言葉を耳にする機会が増えています。
- ジェンダーレスとジェンダーフリーの違い
似た言葉なので混同してしまいがちな言葉ですが、それぞれ意味が異なります。
【ジェンダーレス】
男女の区別そのものをなくす事を指します。生物学的な性差にとらわれた固定概念を持つことをやめ、社会的文化的な性差を無くします。
(例)家事を分担する
【ジェンダーフリー】
性別による社会的差別をなくす事を指します。生物学的な性差による役割分担にとらわれず、誰もが平等に自分が望む生き方を選択できるような考え方です。
(例)家事や育児を母親だけに押しつけない
上記のように単なる流行言葉ではなく、人権問題や男女差別解消のためにも社会的意義の深い言葉です。
下記では、ジェンダーにとらわれない近年話題の製品をピックアップしました。
- 固定概念からの解放
ワコールメン レースボクサー (ワコール)
「多様性という価値観が広く認識されはじめ、男らしさや女らしさにとらわれない、自分らしさを追求できる時代に、下着においてはどうか、と疑問に感じた事が開発のきっかけです(商品サイト引用)」
一見、ニッチな製品のように思われますが、通気性や快適性、アウターへの響きにくさなどもあり、とても好評と話題になりました。当初3ヶ月の売上目標を10日間で達成。その後も完売状態が続いているようです。レース=女性という固定概念を捨て、男性の美意識の変化と向き合う事で、インナーウェアの新しい市場を開拓しました。
- 性別問わず手に取りやすいデザイン
アクメディカ 薬用スキンケアパウダー(ナリス化粧品)
1995年のブランド発売当初はニキビに悩む20代女性が楽しくケアできる事をコンセプトとしていたため、ピンクの女性を意識したパッケージでしたが、お客様相談窓口に寄せられた男性の意見を反映する形で2021年パッケージをリニューアルしました。
シンプルで誰もが手に取りやすいデザインへと生まれ変わり前年比291%増。さらに男女のモデルを採用。またQRコードや、「ユニセックスパウダー」という言葉をいれる事で男性層への手に取るハードルを下げました。
製品本来の特徴と誰もが感じる現代の肌悩み(マスクによるムレや擦れ、肌荒れやテカリなど)とがマッチし、パッケージのリニューアルを期に幅広い性別年齢に愛される製品へと生まれ変わりました。
- おもちゃ業界にもジェンダーフリーの流れ
映画トイストーリーに出てくる「ミスターポテトヘッド」。1952年にアメリカで誕生し長く愛されるおもちゃですが、2021年2月、ブランドネーミングを「ポテトヘッド」へとし、ジェンダー平等を促進すると発表されました。
日本でも、おもちゃ業界におけるジェンダー平等の動きは見られ、おもちゃ選びの指標ともなる「日本おもちゃ大賞」では、2021年よりボーイズトイ・ガールズトイ部門をなくし、「キャラクター・トイ部門」など新たな部門が設けられました。
その他、男の子が手に取りやすいお世話人形や、女の子が手に取りやすい車や工具のおもちゃなど、さまざまな商品で性別イメージが取り払われています。
その他、商業施設の丸井では「こどもの日・母の日・父の日」を「家族の日」として、家族と楽しく過ごす提案をしています。また広告でも男性が家事をしているシーンや女性が運転しているシーンなども多く見受けられるようになってきました。
「こうあるべき」といった固定概念をなくし、男女の二者択一ではない考え方が、商品開発のヒントとなりそうです。