人気ゲームの「マリオカート」をイメージさせる衣装とともに公道カートのレンタルを行う(株)マリカーが、ゲームを販売している任天堂(株)より提訴されるという出来事がありました。
ことの発端は、マリカー社が2015年「マリカー」の文字商標を出願し、2016年6月に登録されたことです。同年9月に任天堂が「マリカー」はゲームの「マリオカート」の略称として広く知られており、誤認を招くとして、登録取り消しの申立てを行い、証拠として「マリカー」の呼称が使われているブログ・雑誌の記事などを提出しました。
しかしながら特許庁は「マリカー」が「マリオカート」の略称として広く知られていると認めるには不十分と判断し、2017年1月に任天堂の申し立てを却下しました。
同年2月、任天堂はマリカー社に対し、著作権を侵害しているとして損害賠償を求める訴訟を起こし、現在に至ります。
このような略称に関するトラブルを防ぐ最も確実な方法は、「略称も商標登録する」ことです。
実際に下記のようなケースで、略称が商標登録されています。
・「ドラクエ」(ドラゴンクエスト)…株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス
・「スタバ\SUTABA」(スターバックス・コーヒー)…スターバックス・コーポレイション
・「マック\Mac」(マクドナルド)…マクドナルド インターナショナル プロパティー カンパニー リミテッド (※「マクド」は登録なし)
・「リポデ-」(リポビタンD)…大正製薬株式会社
・「ポテチ」(ポテトチップス)…株式会社湖池屋
・「山大」(山口大学)…国立大学法人山口大学
(※悪意のある先行登録を防ぐのが目的で、山形大学の使用を制限する目的ではないとのこと。
ちなみに山梨大学の略称は「梨大」です)
ネーミングを考案した段階から略称の商標登録をすることは必須ではありません。
しかし、「マリオカート」は1992年に第1作が発売されたので、約25年間、略称が商標登録されていなかったことになります。
ある程度略称が認識された段階で商標登録をしないと、第三者による先行登録のリスクが起こりえます。略称においてもスピード感のある商標戦略が求められます。