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最新ネーミング事情 Vol.187 【X’mas】は日本だけ? 「X」にまつわるエトセトラ

最近ではあまり見かけなくなりましたが、「X’mas」という表記をご存じでしょうか?
実は、クリスマスを「X’mas」とアポストロフィー付きで略すのは日本特有のもので、英語圏では「Xmas」の表記が一般的です。

Christmasは、Christ(キリスト)とmass(ミサ・礼拝)から成り立つ言葉で、「Xmas」の「X」はギリシャ語で「キリスト」を意味する「Χριστός(Christos)」の頭文字「Χ(カイ)」に由来しています。

日本で「X’mas」という表記が定着していた理由は諸説あります。例えば「Can not」を「Can’t」と省略するように、「Christmas」を省略した形として強調したとされる説。しかし、これはネイティブスピーカーによると、省略のアポストロフィーは単なる装飾的な記号ではなく、省略された文字の代わりとして使用されるものです。そのため「X’mas」の場合は、XがChristを意味しており省略された文字はないため、本来のアポストロフィーの役割に沿っていないと感じられるようです。

また、所有のアポストロフィーとして使われたとも解釈できますが、Christ(キリスト)のMass(ミサ)ではないため、いずれにせよアポストロフィーの使い方は誤っていると言えるようです。

そもそもキリスト教圏では、神の子である「キリスト」を「X」と略して呼ぶことを好まない傾向があるようです。 この「X」がギリシャ語に由来することを知らない人も多く、単なる英語の省略と捉えて失礼だと感じる人も少なくありません。そのため、一般的な文章では「Christmas」と正式に表記することが推奨されています。

■日本特有の「X」の使い方

また、「X」の使い方で日本特有のものとして挙げられるのが、「クロス」として解釈する習慣です。「X」は交差(クロス)を連想させることから、英語の「CROSS」として読ませるネーミングが広く浸透しています。

例:XC(クロスシー/シチズン)※「cool-clear-creative」をコンセプトに誕生

ただし、この「CROSS」には英語圏で「十字架」という意味も含まれるため、言葉の組み合わせ次第では宗教的にネガティブな印象を与える可能性があるため注意が必要です。

■「X」の発音ルール

英語圏では、一部例外を除き、「X」は基本的に「エックス」と発音されます。
しかし、この発音は単語の位置やつづりによって異なり、場合によっては日本人にとって読みにくいこともあります。

  • 語頭にある場合:「ザ(z)」や「ゼ(z)」といった音になることが一般的です。
    例:Xerox(ゼロックス:ゼロックス社)、Xylophone(ザイロフォン:木琴)
  • 語中や語末にある場合:「クス(ks)」や「グズ(gz)」の音になることが多いです。
    例:Box(ボックス:箱)、Exam(イグザム:試験)

数学の方程式で未知数を「x」とするように、ネーミングの世界でも「X」は未知数や可能性を表現する文字としてよく使われます。しかし、グローバルに展開する際には、その発音や意味が正しく伝わるかどうか、事前のネイティブチェックをお勧めします。