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最新ネーミング事情 Vol.188 「蛇」にちなんだネーミング

今年2025年は巳年です。蛇は古来より信仰の対象とされ、その独特な体形や生態も相まって、「蛇」にちなんだ名前が数多く存在します。
今回は、そんな蛇にまつわるネーミングをご紹介します。

蛇にちなんだネーミングの例

  • コブラ(Cobra:有鱗目コブラ科の毒蛇の総称)…自動車

1960年代に一世を風靡したスーパーカーです。
名前の由来には諸説ありますが、デザイナーのキャロル・シェルビー氏が「自ら設計した車両に『Cobra』という名称が冠されている夢を見た」という説が有力とされています。
また、マッシブな車体や力強い走行性能も、この名が採用された理由の一つと推察されます。
スーパーカーの名称には、しばしば蛇にちなんだものが採用されています。
シェルビー氏が後年開発に関わった「バイパー(Viper:マムシ類)」や、日本で注目を集めた「オロチ(大蛇)」もその例です。

  • セルペンティ(Serpenti:イタリア語:蛇)…ジュエリー

イタリアのブルガリ社が展開するジュエリーブランドです。
「蛇」が古代より神秘と叡智の象徴とされてきた点を、ブランドの世界観と重ね合わせています。
そのため、デザインにも蛇をモチーフとした要素が取り入れられています。

  • パイソン(Python:ニシキヘビ)…プログラミング言語

多くのWebアプリ開発で使用されている、オープンソースのプログラミング言語です。
生みの親であるグイド・ヴァンロッサム氏が、BBCのコメディ番組『Monty Python’s Flying Circus』のファンであったことから、そのユニークさにあやかり名付けたと言われています。
そのため、プログラミング言語自体に直接「蛇」と結び付く特徴はありませんが、Pythonのロゴは蛇をモチーフにしています。
また、Pythonの開発環境(ツール)として代表的な「アナコンダ(Anaconda:世界最大級の蛇の種族)」は、その名前からもPythonを意識していることがうかがえます。

  • ジャノメ(蛇の目)…ミシン

日本の大手3大ミシンメーカー(他2社はブラザー工業、JUKI)の一つです。
ネーミングの由来は、同社公式Webサイトによると『ミシンの通称カマ部と呼ばれる部分におさめられたボビンの形が、「蛇の目模様」に似た丸い形状だったことから、ボビンの形が「蛇の目」に見える新しいミシンは「蛇の目式」と呼ばれたことによります。』とのことです。
『正真正銘の国産ミシンだという誇りをもって、あえて「蛇の目」という日本名にこだわった。』とも記されています。

蛇にちなんだその他の言葉

  • ボア

ふわふわの襟巻きというイメージからは想像しにくいですが、語源はラテン語で「大蛇」を意味する「Boa」に由来するという説が有力です。
襟巻きをした姿が、まるで大蛇を首に巻いているように見えることから、この名前がついたと言われています。

  • 蛇口

水道の先端部分、無意識に「蛇口」と呼んでいる方も多いと思いますが、その名前は漢字の通り「蛇」に由来しています。
明治時代に東京で日本製の共用栓が作られた際、龍の形をしたデザインが採用されました。その「龍」が転じて「蛇」となり、「蛇口」と呼ばれるようになったと言われています
では「蛇」ではない「口」も存在していたのかというと……実在します。
日本で初めて近代的な水道が作られた際には、イギリスから輸入された共用栓が採用されており、そのデザインはライオンの口から水が出る仕組みになっていたそうです。

  • コブラツイスト

プロレスの有名な極技の一つです。
日本プロレス固有の呼び名であり、海外では「Abdominal Stretch」と呼ばれています。
1950年代末に来日したエンリケ・トーレス選手が初めて公開したとされていますが、60年以上前の出来事であるため、命名者に関する記録は明確には残っていないようです。
近年では、日本のアニメ作品におけるコメディ描写で用いられることが多く、海外のアニメファンの間でも、日本のアニメを観る上での知識の一つとして知られつつあります。