Vol.14、Vol.41 で、時代とともに変化するネーミングについてご紹介しましたが、今回は逆に変化しない表現を取り上げてみます。
●レンジで “チン”
最近の電子レンジは調理が終了しても「チン」というベルの音は聞こえず、大抵が電子音で知らせてくれます。
しかし、人々のイメージの中に「電子レンジでの調理=チン」というイメージが根付いているので、今でも電子レンジに関連する商品のネーミングでは「チン」という表現が頻繁に使われています。
●“ダイヤル”(電話)
昔の電話はダイヤル(円盤状の文字表示面)を回して番号を入力していましたが、今となってはボタン式どころかタッチパネル式にすら変化しています。
それでも「災害用伝言ダイヤル」、「ダイヤルイン」など、ダイヤル式電話時代から現在まで使われている表現が多いので、「ダイヤル」という言葉は今でも現役です。
●チャンネルを “回す”
テレビも昔は回転式のつまみを回してチャンネルを変えていました。地デジ化された現在、ほぼすべてのテレビがリモコンでチャンネルを変えますが、今でも「回す」という表現が使われています。
ただ、回転式つまみを知らない世代は「チャンネルを1回だけ変更する=チャンネルを変える」、「チャンネルを次々と変える(ザッピングする)=チャンネルを回す」とイメージする傾向があるようです。表現自体は変化していませんが、言葉の持つ意味は時代とともに変わっていると言えるかもしれません。
●歯磨き “粉”
普段目にしている「歯磨き粉」と言われるものは、ほとんどがチューブ入りのペーストで、「粉」ではありません。本来、ペースト状のものは「練歯磨剤」や「練り歯磨き」と呼ぶそうですが、結局「歯磨き粉」が一番分かりやすく、現在まで使われ続けているようです。
このように、時代によって変わる表現もあれば、変わらない表現もあります。大事なのは「表現の意味そのものが正しいか?」よりも、「表現のもたらすイメージが人々に合っているか?」ということではないでしょうか。