News Letter

VOL.155 東南アジアの商標事情2

【ミャンマーの商標事情】

基礎情報人口:約5,141万人
首都:ネーピードー
言語:ミャンマー語

戦後長らく社会主義政権~軍事政権により、世界から孤立した状況が続いていましたが、2011年の民政移管により経済改革を実施、2012年以降は毎年7%以上の安定した経済成長を達成しています。また、為替レートの統一など、海外企業を受け入れる環境も整備が進んでおり、今最も伸び代のある国と言っても過言ではありません。

民主化から比較的日が浅いこともあり、現時点でミャンマーには商標法が存在しません。
代わりに「商標所有権宣言書」を証書登記事務所に登記し、現地の新聞に「警告通知」を掲載することで擬似的に商標を守っている状況です。
しかし商標法の整備も着々と進められており、2018年2月に法案が上院で採択され、7月現在下院で審議中です。施行時期は未定ですが、具体的な内容は出来上がっています。

対象となる商標は“視覚的”に認知されるもの(文字、図形、色など)で、音・匂いは対象外と見られています。区分は国際商標分類と同じで、更新も標準的な10年毎(出願日から)となる予定です。

先願主義・登録主義が予定されているのですが、現行制度で所有権を登記していても自動的に登録商標とはならない予定で、新制度で再出願することが必要となる可能性があるため注意が必要です。

出願審査の段階では、絶対的拒絶理由(識別力など)のみの審査で、相対的拒絶理由(他者商標とのバッティングなど)は審査されない予定です。この場合、先行商標の権利者から異議申し立てがなされた際にあらためて審査される形になるわけですが、権利者が他者の出願をどのようにウォッチングしていくかは未定です。

【タイの商標事情】

基礎情報人口:約6,572万人
首都:バンコク
(正式名称:クルンテープ・プラマハーナコーン・アモーンラッタナコーシン・マヒンタラーユッタヤー・マハーディロック・ポップ・ノッパラット・ラーチャタニーブリーロム・ウドムラーチャニウェートマハーサターン・アモーンピマーン・アワターンサティット・サッカタッティヤウィサヌカムプラシット)
言語:タイ語

JETROの調査によると、海外に拠点を持つ日本企業の所在地で、タイは中国に次ぐ2位で、米国を上回っています。かつては製造業の進出がほとんどでしたが、近年はサービス業の進出も顕著なようです。
UNWTOによると、国際観光収入も世界第3位となっており、日本人観光客向け市場の拡大も予想されます。

先願主義、審査期間は約12~15ヶ月。更新は10年毎(登録日から)です。
2016年改正では音商標の登録が認められるようになり、多区分出願(複数区分を1つの商標出願に含める)が可能となりました。
また、2017年にマドリッドプロトコル(マドプロ)に加盟したため、1つの商標出願で複数国に一括して手続きを行う場合、対象国にタイを含めることが可能になりました。
多区分出願、マドプロ出願ともに費用的なメリットが大きく魅力的に映りますが、タイは識別力の判断が非常に厳しい傾向があるので注意が必要です。他国では識別力ありとなる場合でも、タイではそうならない可能性があります。

まず、母音が含まれないアルファベットや数字からのみなる商標は極端に短い構成でないとしても識別力が弱いとされています(日本では3文字から識別力あり)。 また、略語についても識別力が弱いと判断されることがあり、過去には「TECH」が「TECHNOLOGY」の略語であるとして識別力なしと判断されています。 さらに、識別力を生じさせるためにスペルを変える、言葉の一部を接続するなど、日本ではよく取られる手法もタイでは通用しないことがあり、過去には「Klean&Kare」が「CLEAN&CARE」、「PRODUCMIX」が「PRODUCT+ MIX」を想起するため識別力なしと判断されています。