近年、「ひとり向け」を前面に打ち出した商品やサービスが増えつつあります。
その背景には単身世帯の増加だけでなく、「一人で気兼ねなく楽しみたい」「自分のペースを大切にしたい」という価値観そのものの変化も見られます。特にミドル層の男性や、若い世代は性別問わず、ひとり行動に抵抗を感じている人が極端に少ないというアンケート結果もあり、今後ますます市場が広がっていくと予想されます。
そんな注目のおひとり様向け商品やサービスは、ネーミングの観点からも特徴が見られます。
「ひとり」を肯定する言葉が増えた
かつて「一人」は「寂しい」「孤独」といったイメージと結びつくことが多く見受けられました。しかし現在は「ソロ活」「ヒトカラ(一人カラオケ)」「ひとり旅」など、「個」を表す言葉がポジティブな意味で広く使われています。
特に「ソロ(solo)」は音が軽く、趣味や楽しみを連想させ、英語由来であるため「孤独」という重い印象も薄まり、「自立的」「自由」というニュアンスを帯びやすいです。
- ソロキャンプ
- ソロサウナ
- ソロウェディング (パートナーの有無に関わらず、一人でウェディングドレスや和装などの婚礼衣装を着て、
プロによるヘアメイクや写真撮影を行うサービス)
いずれも「一人だからこそ楽しめる体験」として受け入れられており、「単独」や「独り」と表現するよりも柔らかく前向きに聞こえる点は、このキーワードが持つ大きな特徴です。
商品名でも、単身者向け・一人用の商品において
- SOLOTA(パナソニック)/食器洗い乾燥機
- ソロブレンダー(レコルト)/ブレンダー
のように、「ソロ」を由来としたネーミングの例があります。
「ちょうど良い」を連想させる
一人向けのボリュームであることを「少ない/少量」「小さい」と表現するのではなく、「ちょうど良い量」「無駄がない」とそのボリュームならではの価値を伝えるキーワードで表現をしています。
例として
- 食べきりサイズ
- プチ
- ミニ
- コンパクト
などが挙げられ、中でも「プチ」は「気軽/手軽」という印象を与え、「プチ贅沢」「プチご褒美」といったキャッチコピーにも採用されてきました。
商品名では、
- プチっと鍋(エバラ食品)
発売時のキャッチフレーズ「1プチッと1人前」
- ブルボンプチ/プチシリーズ(ブルボン)
プロモーションコピー「わたしの時間、わたしのプチ。」 - プチパーティー(オハヨー乳業)
コンセプト「「ちょっと食べたい」間食シーンに着目した、好きなときに好きな分だけ楽しめる
ひとくちサイズのアイス」
と、個人用や、ちょっとした小腹満たしにぴったりなことを表現しています。
「自分のため」「個」の価値
商品やサービスの受け取り手である「個」に焦点を当てることで、「自分専用」という所有感や、「一人だからこそ充実できる」という価値観を生み出し、満足感や自己肯定感につながります。
自分のペースを重視する現代だからこそ、機能説明よりも「自分のための商品・サービス」という情緒価値をもつキーワードが、消費者心理に合致しています。
- KOKOYOI(福徳長酒類)・・・「じぶん時間(個々)に心地良く酔う」新ジャンル焼酎
- マイサイズ(大塚食品)・・・「私に合ったサイズ(量・カロリーなど)を選べる」カロリーコントロールレトルト食品
- ワンカラ(コシダカ)・・・「1人でも気軽に立ち寄れるカラオケ」ひとりカラオケ専門店
- 焼肉ライク(焼肉ライク)・・・「As you like(お好きなように)」一人焼肉も楽しめる焼肉ファストフード店
- ひとりじめスイーツ(栄光堂F)・・・「ひとりじめ」したくなるちょっといいおやつ
おひとり様市場の拡大は、単なる世帯構造の変化ではなく「一人の時間を楽しむ文化」の定着を意味しています。
そのため商品名も「一人・個人向け」という機能説明でなく、「自分らしさ」「ちょうどよさ」「自由」を感じさせる情緒型へと変化しています。
共通するのは、一人であることを不足ではなく価値として表現している点です。
今後も、おひとり様向けの商品や体験では、「孤独の解消」ではなく「自分時間の充実」を連想させるネーミングが重要になっていくと考えられます。