News Letter

Vol.100 商売上欠かせない「商標登録の重要性」

■商標登録の意義
2009年10月に大手居酒屋チェーンの運営会社モンテローザが「大阪市西成区の飲食店が自社の商標と酷似した看板を使用している」として商標法違反で告訴しました。モンテローザは居酒屋チェーン店「笑笑(わらわら)」を経営しており、その店名(漢字、読み)とロゴマークを商標登録しています。
酷似した看板の使用で告訴された飲食店店主は「ショウショウは自分の幼年期の名前である」と主張。(しかし看板には「わらわら」のルビ有り)

【看板使用におけるポイント】

他者に商標登録されていれば、自分の名前であっても使用できない?
→対象となるサービス(今回は43類・飲食物の提供)で先行商標があれば、自分の愛称であっても看板を掲げたり、店名として使用することはできない(著名性が必要)。(もちろん氏名を普通に使用することは商標権の制限を受けない)
別の漢字での「ショウショウ」では?
→例えば「昇昇」「翔翔」などならば「笑笑」とは類似とならず、登録が可能な場合もある。
モンテローザとは似ていないロゴの場合は?
→デザインのテイストが違っていても同じ「笑笑」の文字であれば類似となる可能性が高い。

商標登録には後発の他者や未登録の類似商標に対して、使用の制限や損害賠償を請求する効力があります。今回の件からも商標は企業にとって大きな知的財産であることが再確認できます。
店名でも商品名でも商売に使用する商標は、後のトラブルを防ぐためにも登録しておくことが重要です。

■商標の無断使用はリスクが大きい
報道後すぐに西成区の飲食店は看板とひさしに書かれた文字にビニールテープを貼り、「自主的撤去」という処置をとりましたが、この看板を掲げていた期間などに応じて改めてモンテローザ側より損害賠償を請求されることも考えられます。
過去には「かに道楽」と「かに将軍」が巨大かに看板を巡って裁判になり、看板のかにの足の本数を変え解決した例や、「スターバックスコーヒー」と「エクセルシオールカフェ」の緑文字看板が似ていたので文字の色を変え解決した例もありました(ともに商標権ではなく不正競争の事例)。
今回の場合は文字が全く同じであり、看板の書体も極めて似ていることなどから、店主の商標登録そのものに対する認識が浅かったと思われます。店名を決める前に既存の商標登録を確認し、侵害のない店名(商標)で営業をしていれば問題はなかったわけです。
商標登録の有効期限は基本的に登録から10年間で、それ以降は更新も可能です。未登録での使用は後発の他者に登録されれば無断使用にもなりかねません。また裁判後の損害賠償以外にも時間的な負担や周囲へのイメージダウンなど多くのリスクが考えられます。