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VOL.18
(1999.02)
地名は登録できないのが商標の原則。でも実際は?
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「河内ワイン」は産地表示?それとも1社の占有商標?
■ 「河内ワイン」が商標登録されていた!
大阪・河内地方で「河内ワイン」の名称をめぐり、地元の醸造業者の間でトラブルが起きているとの新聞記事がありました。「河内ワイン」を商標登録したA社がB社に使用中止を求めたところ、「河内地方で造られたワインという意味で、一社が独占できるものではない」と他社が反発。登録した業者は、名称を使い続けた他社に使用取り消し訴訟を起こし、訴えられた側は商標登録の無効を求めるという事態になっています。
A社は1978年に背景に山の絵を入れ「河内ワイン」と書いた商標を出願し、91年には文字だけの商標を出願しました。91年に絵入りの商標登録が認められ、96年に二つが連合商標登録されました。その後、A社は他の4社に「河内ワイン」の名を使わないように求めましたがB社は応じず、昨年末まで「河内ワイン」を販売、商標権を侵害したとしています。これに対し、B社は「78年に羽曳野市と三業者合同で地元ワインの販売戦略について話し合っている最中に、A社が抜け駆け的に商標出願した」と反論。
現在は「河内産ワイン」としているが、「ワインの商品表示ではメーカー所在地や産出地の地理的名称を使用することは慣行化している」と主張しています。(以上新聞記事から抜粋)
■ 「河内ワインは産地総称」との判決下る
この後、河内ワインの名称の使用中止を求めていた訴訟の判決が大阪地裁でありました。裁判長は「名称は、河内産のブドウを使ったり、同地方で醸造されたりしたワインを指す総称」であるとして、原告の訴えを棄却しました。判決によると「河内ワイン」の名称は1978年に地元の地場産業育成のための共通の名称として採用したものと判断。原告が使う以前から、別の業者が「河内ワイン」を製造、その後も地元の全五社が「河内ワイン」か「河内」の文字入りで製造販売していたと認定しました。また、登録商標は、文字の配置や背景の図柄などの構成が一体となって初めて、その社の商品と識別でき、文字自体(河内ワイン)には識別機能はないとしました。これに対し、原告は「不服だ。控訴するか、検討したい」としています。(以上、新聞記事から抜粋)
■ 地名でも商標登録できるのか?
商標法によると、商標が登録性を持つためには「他人の商品・役務と識別できること」が必要であるとされています。この識別力を持たないネーミングとされているのが、その商品の一般名称であったり、等級を表す言葉、英文字2字などで、地名もその中に含まれるものです。地名は原則的に登録できませんが、すべてが登録できないかといえば、そうでもないようです。では、どういう場合に地名で登録できるのでしょうか?地名が登録できない原因として、「その商品の産地・販売地などを示すにすぎないから」という理由があります。それを逆手にとると「その商品の産地・販売地ではない地名は登録できる可能性が少し残される」ということになります。この場合あくまで可能性が少し残るだけであって、産地でない地名が必ず登録できるというわけではありません。また、地名に識別力がある言葉を組み合わせることで商標登録できる場合もあります。
■ 使用により、地名でも商標登録される場合があります
このように、原則的には商標登録できないとされる地名によるネーミングですが、例外として、使用による認知度により登録が認められる場合があります。これは、商標法の3条2項の適用といわれるものです。
−商標法第3条第2項(使用による識別性)−
前文略〜使用をされた結果、需要者が何人かの業務に係わる商品または役務であることを認識できるものについては、同項の規定にかかわらず、商標登録を受けることができる。
・使用により登録を認められたもの
東京羊羹 旧43類 羊羹
大島椿 旧3類 伊豆大島産の椿を原料とする髪油
いたりあ御召 16類 御召
コロンビア 旧64類 頭飾品、リボン
日本レース 16類 レース生地
ニッポンハム 32類 ハム
東京ロープ 旧35類 綱、紐、テープ
・その他、地名による登録商標の例
サッポロビール、十勝ワイン、神戸ワインケーキ、ケンタッキーフライドチキン
■ 今後の対策と考え方について
ある商標が登録されるかどうかはケースバイケースで様々な要素があり、決定的な法則はないのが現状です。しかし今後ますます厳しくなるネーミング表現の現状を考えると、たとえ原則的に登録できないと言われているネーミングであっても、その表現がマーケティング的に有効であれば商標出願するのもひとつの方法です。たとえ、出願時には登録性がない商標であっても、その後の使用や広告などの認知度によっては、登録査定時に「使用による識別性あり」として登録される可能性が出てくることもあるからです。
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